梅雨と夏の養生法
梅雨と夏の養生法
夏は、血液の循環が非常に盛んになり、心臓の一番働く季節ですが、心臓の負担も多くなります。夏の暑さを調節できないでいると、血液の温度も上がります。漢方医学では、血の(血液の)熱と書いて「血熱」と言いますが、この血熱が生じますと、たとえば頭痛がしたり、のぼせが起こり、狂ったように興奮したり、最悪、熱射病となり意識がなくなります。また、鼻血が出たり、下血したり、血尿が出たり、女性においては、時期はずれの生理出血が起こったりします。これらは、血熱から体を守る生体防御反応なのです。これらの出血は、自然に任せているのがよいのです。無理に止めると、脳の血管が破れて出血する危険が出てくるのです。この血熱を冷ますのに、苦い味が必要なのです。
夏は皆さん夏バテと言うことで、食欲が無くなり、胃腸が弱りますが、それは体の熱を冷やすために体表面に血液が浮き上がり、胃腸とか内臓に循環する血液が少なくなります。ですから胃腸障害が増えるわけです。何度もお話ししていますが、昔「兼高かおるさん」のお話で、インドは暑いですね。インドに行ってすぐには、あんなに辛いインド料理は食べられないけれども、10日間もすれば、あの辛いインド料理が欲しくなり、また美味しくなり食べられるようになるのは不思議です。と言うことを効いたことがありますが、それは、理にかなっています。
辛い食べ物には、胃腸を暖める作用があるので弱っている内臓に血液を呼び戻し、消化吸収力を高めて胃腸障害を治すます。辛いものを食べると、汗が出て発散が起こり、体内にこもっている熱を発散して体温調節が出来るのです。夏必要な苦い味は、心臓を助ける味であると何度も申しておりますが、イコール、苦い味には血の熱を取るということですから、胃腸や肺と大腸を冷やす作用があるわけです。苦い味による胃腸の冷えを未然に防ぐために、薬膳では、苦い味には、暖める作用のある辛味(辛い味)の食材を合わせるのが良いと教えています。それと、蒸し暑い日本の夏を元気に過ごすために、苦い味、辛い味、それともう一つ胃腸を守る甘い味を加えることにより元気に過ごせると薬膳では教えてくれています。夏バテ予防の三種の味のコラボレイションとなります。
例えば、きんぴらゴボウでは、ゴボウは苦い味、唐辛子の辛い味、それとにんじんが甘い味となり、三種のコラボレイションの完成です。沖縄伝統の料理「ゴーヤチャンプルー」は、苦みのゴーヤで体内の熱を冷やし、辛みの酒や、コーレーグースー(唐辛子の泡盛漬け)でお腹を温め、甘い味の卵と豆腐で胃腸を守り、夏バテ防止の最強食材となっています。ウドのぬた和えには、必ず辛い味のからしを加えますし、「鮎の塩焼き」では、ぴりっと辛いたでが必ず添えられます。これらの食材の調理法や組み合わせには、すべて漢方医学の陰陽五行説が組み込まれています。今年は7月22日と8月3日が土用の丑の日ですが、ウナギは良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルがバランス良く含まれ、味は甘い味「胃腸を助ける味」になります。山椒は辛みに属して防腐作用、殺菌作用があり、暑い盛りに食べたウナギが腸内で腐敗発酵しないように消化する働きがあります。それと山椒の風味は、ウナギ独特のにおいを消し、蒲焼きの味を引き締めます。さらに、苦みの補給として、肝の吸い物、肝焼きを食べることにより、先ほどの三種の味のコラボレイションも取り入れているのです。先人の知恵の結集といえるでしょう。ただし、ウナギは脂肪分が多いため、冷たいものとの組み合わせは脂肪分が固まり不消化になりますので気をつけましょう。ウナギとアイスクリーム、天ぷらとメロンは良くない食べ合わせです。
梅雨空の蒸し暑い日が続きますが、ピリ辛料理と苦味と甘味で、体調を整えて頂き元気に夏を迎えましょう。