おせち料理と漢方
おせち料理と漢方
日本人とお正月……
おせちについて、お話しいたします。大掃除の真っ最中という方も多いのではないでしょうか。外国では大掃除はしないそうです。「何でこの寒い中掃除をするのか?」といわれるそうです。
お正月を迎えるに当たって、何となく身が締まる気持ちを持つのは日本人ならではなのかなぁと思います。今年こそはと心新たに誓いを立てて頑張るぞと、前向きな気持ちを皆さんお持ちになり、一年で一番大きな節目を意識させてくれる日が元旦です。
日本人は、お正月には、歳神様という新年を司る神様が訪れるという信仰が元々あります。神様が来られるので、大掃除をしてきれいにするのは、日本人にとって当たり前のことなのです。年末には神様を待つ木、門松を飾り、餅をつき神様を迎える準備をしたのです。今日では「歳をとる」ことは悪いようにいわれますが、元々「歳をとる」ことは人々に歓迎されていました。正月、神様は全ての人や物に新しい生命を与えるために現れると伝えられています。つまり、「歳をとる」ということは一年に一度新たに生まれ変わるということだったのです。今風に言えば「リセット」をすることが出来る日ということでしょう。このように、お正月は日本人にとって、特別な日なのです。
おせち料理は腎を補う食材が多い!……
お節料理とは、お正月や節句の日など特別な日に作る「節句料理」が呼び名を変えてお節料理といわれています。一つ一つの料理に新年の幸福を祈る気持ちが込められています。
色とりどりできれいです。写メールで取っておこうとか思われるのですが、黒い食材も多く感じませんか。黒豆、昆布、田作りなど。漢方の世界では、黒い色は、冬一番働く臓器、腎臓を守る色であり、その食材には黒色が多いのです。おせち料理にはこうした腎を補う食材が沢山取り入れられています。
ゴボウの昆布巻き……
例えば、「ゴボウの昆布巻き」鹹味の昆布でゴボウを巻いて、醤油と砂糖で味付けしたものです。「よろこぶ」事の多い年にと願いを込めています。昆布をはじめわかめやひじきなどの海草類には、尿の出を促して、水分代謝を高め、腎機能を補う働きがあります。鹹味の昆布に相剋にあたる苦味のゴボウを組み合わせて(塩辛いものが多いと心臓、血圧、血管に負担をかけます。)心臓の働きを補うバランスの良い組み合わせです。海藻のぬめりをもたらす「フコイダン」という多糖類は、水に溶けやすい性質を持った食物繊維で、便通を整えると同時に、血液中のコレステロールを低下させて血圧を下げたり、動脈硬化を防ぐ作用もあり、この点でも相剋の「心臓」を助けています。ミネラルと結合しやすいために、過剰に取りすぎたナトリウムの体外に排出するのにも役立ちます。
田作り……
鹹味のごまめ(片口イワシの稚魚)を醤油風味の飴炊きにした「田作り」も、腎を補う一品です。かつては田畑の高級肥料として片口イワシが使われていたことから、豊作を願ってお正月に食べられるようになったと言われています。「田作り」には、筋骨を強くして、内臓の働きを良くして体を温め、水分代謝を促す効果があることを、人々は経験的に察知していたのかもしれません。
栗きんとん……
意外なところでは、「栗きんとん」の栗も、腎を補う鹹味に属します。クチナシの実で黄金色に色づけされた「栗きんとん」は、その豪華さからお正月の定番料理となりましたが、相尅関係で甘味の砂糖によって腎の働きが抑えられるのを、鹹味の栗によって未然に防いでいる、すぐれた組み合わせといえます。黄金の布団に見立てて金運の上昇を祈ります。
黒豆煮……
鹹味に該当しないものの、色の黒い食材の中には、「腎」を補う働きをもったものもあります。「黒豆煮」で用いられる黒大豆は、その色からも推測されるように、腎機能を補う食材で、利尿作用にすぐれ、そのうえ解毒効果も高いので、肝臓を守ることになります。まめまめしく働く一年を祈ります。
たたきゴボウ……
おせち料理に欠かせない「たたきゴボウ」のゴボウも、腎を補う黒い食材の1つです。ゴボウに含まれるイヌリンという炭水化物は、利尿効果にすぐれ、水分や血液の滞りを解消し、むくみを取るのに効果的です。漢方薬では、ごぼうの種は牛房子と呼びむくみを取るクスリになります。セルロースやリグニンなどの食物繊維が多く含まれているので、毒素の排出には欠かせない野菜の1つです。又ゴボウに含まれるアルギニンという成分はスタミナドリンクにも利用される滋養強壮剤です。
精のつく海老!……
お節の彩りを華やかにして子供も喜ぶ赤い色と言えば、海老です。之は背中が曲がるほど長生きをするようにという祈りを込めています。漢方的には、海老も精の付く物、腎臓を丈夫にする物と考えます。ぴんぴん跳ねる事からもその元気をいただくということなのです。この一年もこのお節にあやかり、皆さん元気に過ごしましょう。