陰陽と体について その2 逆転現象
陰陽と体について その2 逆転現象
陽主陰従(陽が主で、陰は従ってくる物)……
先週は陰陽と身体についてお話しいたしました。陰陽の関係には「陽が主導権を握っている」、さらに、「陽が弱ると陰という物質も減ってしまう。」と言う関係にあるので、陽を減らすこと、陽を傷つけることは、控えないと元気で長生きが出来ません。とにかくお腹を冷やすことが良くないことですと言うお話しでした。もう少し詳しく陽気の不足イコール冷えと身体についてお話しいたします。
火神派の医理眞伝……
8年ぐらい前、中国では漢方薬の医学書で「医理眞伝」という本がベストセラーとなりどこの書店でも並べられているほど売れておりました。1868年ぐらいに書かれた書籍で、冒頭から、世の医者は、漢方薬の使い方が間違っているという下りで始まります。この流派は、「火神派」と呼ばれ、身体を温めて治すことを主流とする流派なのです。漢方薬というのは、頭痛のお薬でも、色々な原因があり、その人の体質に合った漢方薬を考えますので、一人一人薬は違ってきます。それを選ぶ考え方として、その人の証を見極めます。その弁証論治は色々な考え方があり、難しいのですが、この医理眞伝では、人間の生命活動における陽気の働きを重視し、「陽気の弱り」が多くの病気の原因であると考えています。治療に関しても陽気を強める作用を持つ辛熱薬を大量に使う薬で治療します。
漢方薬はその人の陰陽をみて選ぶ……
この火神派の理論は、人と病気をもっと単純に診なさいと言っているのです。皆さん難しく考えすぎていて、本質を診ていないので、まとを得た薬が得られないでいるのです。病気になる人は、陽気が不足しているか、陽気が有り余っているのか。先ずそれを考えなさい。陽気(生命エネルギー)が不足しているとそれは病気になります。陽気が有り余っていると元気と言うことですから病気になりません。ただし、化膿性の疾患は熱を持っていますから、陽気が有り余っているので、このようなときは温めてはいけないのです。ですから、ほとんどの病気は、陽気不足ということですから、特殊な場合を除いて全て温めて治しなさいと言うことになります。「冷えが万病の元」ということなのです。しかしながら、現代医学の漢方薬は、適応症があり、その考え方で薬を選ぶと、全くまとを得ていないことが非常に多いのです。ですから、病名で漢方薬を選ぶのでなくてその人の陰陽の状態を診て薬を選ぶことが大切になります。
体内の水の玉と龍(ドラゴン)……
病気の原因ですが、たとえ話をしましょう。へそ下3寸の丹田というツボがありますが、その当たりに水の玉があると想像して下さい。水の玉の中に龍が住んでいます。水の玉はお腹が冷えて無くて元気で陽気が充実しているとへそ下3寸のところに居続けることが出来ます。これが健康な状態です。冷たいものを飲み続けてお腹が冷えていると、又年齢を重ねて陽気が少なくなってお腹が元気で無くなると、この水の玉は、へそ下3寸に押しとどめることが出来なくなり、体中に水の玉が広がります。そうなりますとこの水の玉の中にいた龍が暴れ出します。体中の至るところに龍が行き火を噴いて暴れます。体の芯は冷えているけど、症状として、反対の熱症状があらわれているのです。このような状態の病気が現代人には非常に多いのです。
暴れる龍を納める方法……
これらが典型的に現れている病気の代表が、アトピー性皮膚炎や乾癬です。体中に出ている皮膚の炎症は、龍が暴れて火を噴いている状態です。龍を攻撃するような冷やす薬を使ってはいけません。漢方薬であろうとも炎症があるからと言って、冷やす薬を使うと、益々お腹の元気がなくなり皮膚病は悪化します。お腹を温める薬を使い、お腹の陽気を増して元気にして、身体全体に広がった水の玉を元に有ったへそ下3寸の位置に押しとどめるようにすると、龍が暴れることなく健康な身体になるのです。龍は陽気イコール生命エネルギーですから、攻撃していじめてはいけないのです。命の火ですから大事にしないといけません。
アレルギー性鼻炎、乾癬、天疱瘡などの難治性の皮膚病、更年期障害の冷えのぼせ、高齢者の高血圧、耳鳴り、めまい、頭痛、神経痛、心臓病、脳血管障害、口や舌の痛み、50才を過ぎた人の口臭、味覚障害などの治りにくい病気は、特にこのような考え方をしてお腹を温めないと良くならないと言うことが多くあります。体の芯は冷えているけど、熱症状が体の上部や体表部に出ている時、その時には体の芯を温めて治さなければならないということです。それらを解決してくれる糸口になったのがこの火神派の医理眞伝という漢方薬の本なのです。
何度も申しますが、冷たい飲み物を少し減らす工夫をして頂くと、お腹の陽気は充実して陰と陽の気がととのいます。病気の予防や改善に一番役立つ養生法となります。来週は梅雨の過ごし方についてお話いたします。